第百六十七回 まいんちいろんな夕暮れがある
情けない私が振り向くと、部屋の、南に面した障子が桃色に染まっていた。
ベランダへ飛び出し、眼路いっぱいに美しい夕焼けが、しかし、昨日から干してある洗濯物が邪魔で、棚雲も富士も黒い山々の際もよく見えない。
急いで取り込み終えるとすでに太陽は沈んだ後だった。
ちょっと待っててくれてもいいのに。
わざわざ淹れたお茶は、干した物を片付ける騒ぎのうちにすっかり渋くなっているし。
もうちょっと家事に身を入れよう。
肩を落としながら窓を閉めに行った。
富士山の向こうには、濃い絹雲でもあったのか、見えない夕日が沈む前より赤く一瞬燃えた。
第百六十六回 頭から離れないこと
半年前の自分のお絵かきとー、
昨日の自分のお絵かきを見比べるとー、
ちゃんと上達してるって手応えを感じるんです。
ほめてもらって、アドバイスをもらって、
人に見せ続けて、
描かないと感覚を忘れて、
スポーツみたいに描いて描いて、
個性みたいなものもうっすら掴めてきて……
どうして小説に対しても、そういう姿勢になれないんだろう。
いや、なれなかったんだろう、か?
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第百六十五回 半身浴とコンチェッティスモ
TSブログ(左のメニューから飛べます)がイラスト週間なので、こっちにしか
文章書けるスペースがありません。ウワーハハハハ。中毒。
ちかごろは、
これ。中井英夫のエッセイを、風呂の中で読む夜が続いています。
40ページずつ、概算三本から五本も読むとのぼせてきて、入浴の終わりを悟るんですが、(寒いので湯の温度は44度にしております。風呂の温度は41度!そんな事もわからんのかァーッ! ごめんなすわーい!ご主人様ッツ)肩凝りもほぐれるし、何より湯冷めしないし、いいですよね半身浴……
じゃない! 中井英夫の話。
どうもー、「虚無への供物」を、まだ読んでないクセに、日記や随筆、時系列もバラバラにコアな、私的な部分の文章を、読み散らかしている状態。長編は、未読なくせに、次に読みたいのが「彼方より」(戦時中の日記、たぶん)。苺は最後まで食べないタイプです。いつも。
見た夢とか、経験したこととかを、わりと忠実になぞって小説にしているようなことを言っているので、いざ読んだ時、薄らボンヤリとダブるのかな。
元来は、創作物の方が先なのでしょうが、まず最初に全集を買っている時点で、作家を公私に渡って文字列をたどって追いかけるのを決めたようなものですから、この際順序は棄すことにします。
さて、この中井英夫全集を買ったのが、高円寺にあるとある瀟洒な古本屋であります。
何が気にいったって、六畳もないのに、探偵小説と、料理本と、ムーミンが充実しているという点。
店主もメガネで、佇んだ瞬間「こ、ここは天国ですか(@沙村広明)」と呟いたくらいで、やんぬるかな、数えきれぬページの隙間にその音声がすべて吸い取られて、消えていればいいのですが。
そこで購入した、セロハン包みの美本を抱えて風呂に入ります。
長く漬かるので手だけは出していないと、じきに茹だってしまう。ですから手持ちぶさたになり、自然と文庫本になる。
風呂場の戸を薄く開け、空気を逃がしている中で、イタコの話、薔薇の話、竹中英太郎の話、ボッシュの話、宗教、墓碑、戦争、古本……コンチェッティスモの興味は、暗い深海の底、じっと待ち、目をつむり、必要な糧を、確実にとらえる重たげな魚じみて、おタンビーな趣味の分際でめんどーくさがりの自分から見るととても羨ましい。
同時に、おタンビー派として、こういう所に眼を着ければ、しかるべき結論にたどり着き、いかにもお耽美な人間になるのがありありとわかります。
唸っているといつの間にか今日も40ページ読み進めていました。
武満徹の話まで読んだよ。
風呂を上がる前、最後に顔を洗います。
汗腺のひらいた顔の皮膚は硬く膨張していて、指をふれるとどきんとする。
毒気にあてられ、「鬼火」の万造のように、醜くただれてしまったんじゃないか。
葛藤
第百六十四回 絵日記サイトに憧れて?
日記を、はてなからFC2かどっかに移して、
「一こま絵日記」みたいな風にしたいなーなんて思ってるんですよ。
描きたくなければ普通にテキストで。
なんかもー、多幸感あふれるブログを半年近くやってると、
「俺がルールブック」的な掃きだめが欲しいにょおおおおおおって
なってくるわけで。
はてな、画像の容量がイマイチなんですよねー。。。。
とりあえず、どっか借りてみっかな?
そしてそれが学生時代から連綿と続いた(ウソ)
片足パノラマ島の、ひとつの時代が終わるときなのです。
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第百六十三回 僕ちょっと強いかも
纏まった虚構を半年近く書いていない。
やはり私はニセモノだったんだなァ アハハハハ アハハハハ
と変な人の振りをする前に、生まれ損ないの、死に損ないは、
生きるスピードを速めて、何かを掴まなきゃ。
そう思って、まずは少年マンガだな。(?)って思ったんですよね。
努力! (友情! ※←小さく) 勝利! みたいな。
千明様が買ってきた「ハンターハンター」を読んでいたら、
単純に、「努力はやっぱ面白そう」とか、いい感じになれたんです。得な性分。
でも、キメラアント編に差し掛かったあたりから、
「うぇぇ……ぁぅ……」ってなって、
カイトがフランケンになって再登場した時は「うげぇ……」ってなって、
ネフェルピトーの脳味噌かき回しシーンでどん底になってしまいました。
オヴェェェェェェッ(吐いてる)。
なんだよアレ本当にジャンプ?
そうか、本誌で読んでた時は、エンピツラフだったから注視して
なかったんだな。
ああいう話だったんだぁ、脳味噌。
誰か、助けてくれ……私のテンションを……返せ……。
第百六十二回 守ってちゃん
気がついたら煙草の箱の積み上がる速度が、二倍になっていました。
成人済みのワガママな甘ったれがオシャブリの代替品にするという煙草。
私はゆっくり小さくなっていってるのかな?
言われてみると、少し昔から、有袋類への憧れがボンヤリ生まれてました。
誰ぞの胸ポケットへ小人と化して入り込み、いっさいの自立心を投げ出して
安穏と外の世界を眺める。
学生の頃にはなかった妄想です。
私の中での、理想であるとか、安寧であるとかの概念が形質を変えつつあるみたい。
なにやら夢占いじみてきましたが、たぶん、たぶんなんですけど、
今、自分を何かの矢面から守っている外皮が、生成時から持っていた亀裂、
それが目に見えるほど大きくなったからじゃないかな、と思います。
ワガママで甘ったれですので、そのへんは何とも。
煙草をくわえながら、新しい外皮を探さなきゃ。
近頃はそんな事を考えています。
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