第百六十五回 半身浴とコンチェッティスモ
TSブログ(左のメニューから飛べます)がイラスト週間なので、こっちにしか
文章書けるスペースがありません。ウワーハハハハ。中毒。
ちかごろは、
これ。中井英夫のエッセイを、風呂の中で読む夜が続いています。
40ページずつ、概算三本から五本も読むとのぼせてきて、入浴の終わりを悟るんですが、(寒いので湯の温度は44度にしております。風呂の温度は41度!そんな事もわからんのかァーッ! ごめんなすわーい!ご主人様ッツ)肩凝りもほぐれるし、何より湯冷めしないし、いいですよね半身浴……
じゃない! 中井英夫の話。
どうもー、「虚無への供物」を、まだ読んでないクセに、日記や随筆、時系列もバラバラにコアな、私的な部分の文章を、読み散らかしている状態。長編は、未読なくせに、次に読みたいのが「彼方より」(戦時中の日記、たぶん)。苺は最後まで食べないタイプです。いつも。
見た夢とか、経験したこととかを、わりと忠実になぞって小説にしているようなことを言っているので、いざ読んだ時、薄らボンヤリとダブるのかな。
元来は、創作物の方が先なのでしょうが、まず最初に全集を買っている時点で、作家を公私に渡って文字列をたどって追いかけるのを決めたようなものですから、この際順序は棄すことにします。
さて、この中井英夫全集を買ったのが、高円寺にあるとある瀟洒な古本屋であります。
何が気にいったって、六畳もないのに、探偵小説と、料理本と、ムーミンが充実しているという点。
店主もメガネで、佇んだ瞬間「こ、ここは天国ですか(@沙村広明)」と呟いたくらいで、やんぬるかな、数えきれぬページの隙間にその音声がすべて吸い取られて、消えていればいいのですが。
そこで購入した、セロハン包みの美本を抱えて風呂に入ります。
長く漬かるので手だけは出していないと、じきに茹だってしまう。ですから手持ちぶさたになり、自然と文庫本になる。
風呂場の戸を薄く開け、空気を逃がしている中で、イタコの話、薔薇の話、竹中英太郎の話、ボッシュの話、宗教、墓碑、戦争、古本……コンチェッティスモの興味は、暗い深海の底、じっと待ち、目をつむり、必要な糧を、確実にとらえる重たげな魚じみて、おタンビーな趣味の分際でめんどーくさがりの自分から見るととても羨ましい。
同時に、おタンビー派として、こういう所に眼を着ければ、しかるべき結論にたどり着き、いかにもお耽美な人間になるのがありありとわかります。
唸っているといつの間にか今日も40ページ読み進めていました。
武満徹の話まで読んだよ。
風呂を上がる前、最後に顔を洗います。
汗腺のひらいた顔の皮膚は硬く膨張していて、指をふれるとどきんとする。
毒気にあてられ、「鬼火」の万造のように、醜くただれてしまったんじゃないか。
葛藤