第百六十七回 まいんちいろんな夕暮れがある

hitomi-hirosuke2007-02-02



情けない私が振り向くと、部屋の、南に面した障子が桃色に染まっていた。



ベランダへ飛び出し、眼路いっぱいに美しい夕焼けが、しかし、昨日から干してある洗濯物が邪魔で、棚雲も富士も黒い山々の際もよく見えない。
急いで取り込み終えるとすでに太陽は沈んだ後だった。
ちょっと待っててくれてもいいのに。
わざわざ淹れたお茶は、干した物を片付ける騒ぎのうちにすっかり渋くなっているし。
もうちょっと家事に身を入れよう。


肩を落としながら窓を閉めに行った。
富士山の向こうには、濃い絹雲でもあったのか、見えない夕日が沈む前より赤く一瞬燃えた。






そろそろ、「しゃべる」のをおやめなさい
鳥居 勝幸 堀井 計
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