第九十九回 三日月に少女


新幹線の中からの更新です。


昨夜の東京は朧月夜でした。
朧月夜といえば、小学校で必ず歌う『おぼろ月夜』。


五年生くらいの時三人一組でソプラノ、メゾ、アルトに分かれて歌いなさい、と言われて、近くの席の女の子達とトリオを結成したついでに『ユニット名』も決めようぜ、みたいな流れになりました。
(今思えば、三人とも形から入るタイプだった)


「三つで一つ、みたいな名前にしよう」
地元じゃ負け知らずな提案のもとに、
「信号機隊」
「トリオ三権分立」(ナゴムバンドみたい)
「三角ズ」
「チン・トン・シャン」(勿論ながら誰がチンになるかで揉めてご破算)
と柔らかい頭でアイデアを出しあった挙げ句、
誰かが、
「三色団子は?」
と言うのに、
「団子隊?」
「団子ズ!?」
「団子ズ!!!」


少女合唱団『団子ズ』結成。
十歳にして渋すぎ。



そして、当たり前のように誰がどの色になるか、すなわちグループ内の源氏名を決めますね。
並び順からソプラノの子が桃色の『さくら』、アルトの子が『みどり』になりました。(※練習そっちのけ)



さて、困ったのが私。
真ん中のパートなので割り当てられるのが色の着いていないお団子です。
「ねぇ、あれってなんて名前……?」
「『シロ』だと犬みたいだもんね」
「ていうかアレ……何?」
三人寄れば文殊の知恵です。
ついに一人が天啓を得たように手を叩きました。




「わかったっ、餅だ!」


今で言うなら「天才あらわる」くらいのメカラ・ウロコで三人大盛り上がり。
見事私の芸名は『もち』に決定しました。








今思うと、アレは絶対モチじゃないと思います。
ていうか餅なら団子じゃないじゃん!!



人見広介は、朧月夜に行き合うたびに、三人で笑い転げた小さな頃の記憶が蘇るのでした。
万が一、同窓会みたいなものに将来よばれたら、
「アレはモチじゃなかったよね」
と当時のメンバーに抗議しに行きたいと思っています。
再び笑い転げるために。