第八十二回 うつむくまつげ
「百合」というジャンルは、やおいとか、ロリとかいう、日本文化の暗部の一端を担っています。私は百合が好きです。
夕月を仰ぎ見て訳もなく涙さしぐむあえかな女学生、イイね!
お揃いのハンケチーフ、イイね!
おさげ髪に袴に編み上げのブーツ、イイね!
少ししか歳が違わないのに、学校の制服が似合わない位大人びた先輩がいると、
憧れました。
小動物っぽい後輩がいると、可愛くてついつい苛めてしまいました。
友人に彼氏ができると、「取られた!」とショックを受けて影で嫉妬。
美人のクラスメートに密かに「サロメ」とふたつ名を捧げ、話しかける度胸もないまま、
たまに廊下ですれ違って胸の高鳴りが抑えられない放課後。
思い出すとそれは、恋愛に近く、また恋愛よりも尊い心情でした。
幼かったあの日々は、今も記憶の引き出しの一番上の二重底に仕舞われています。
皆さんはありませんか?
だからという訳ではありませんが、
「コミック百合姫」が許せないんですよね!
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「百合姉妹」から「百合姫」を頬杖付いて読んでみると、どうやら「百合」は、
私の感じていたあの吉屋信子的な微熱からコペルニクス的転換を果たし、
今では立派な「萌え」ジャンルとして幅をきかせているようなのです。
校内で人目もはばからずイチャイチャ。
更衣室であの子の巨乳とか見てハアハア。
王子様とお姫様の物語を、女同士にすり替えただけのファンタジー。
レディコミを女同士にしただけとしか思えないエロ漫画。
で、そ れ な ん て エ ロ ゲ ?
違うっしょ!(#^ω^)ピキピキ
神輿、
担がれちゃって
ませんか!? (@絶望先生)
これらをお借りしたお友達のサブ子さん(乙女)とは、その前の「百合姉妹」創刊の折、
「とうとう我らの時代が来た」と、喜び合ったものです。
その希望は、「姉妹」vol.1の時点で早々と刈り取られてしまった。
むしろ、昔私の経験した気持ちは、「百合」に通ずるものではなかったのか?
とさえ思ってしまいます。
私はあの子の制服の下がどうなっているのかなんて、
微塵も考えたことはなかった。
だってそれは冒涜だもの。みつを
ノーブルな同級生に憧れて、自転車の綺麗な乗り方を真似する。
夕日になびく長い髪に胸がざわざわした、帰り道。
「こっちこっち」と、私の手を握って走り出す、可愛いクラスメート。
乙女は、本当の乙女たちは、
レズ物が好きな男どもの需要に
迎合しない!
と思うのです。
同じ人ならわかる(@東京事変)はず……。
祈ります。百合にゴッドハンドが介入することを。
そして、乙女たちの園にまた花が咲くことを。
ともかく、最近の百合ブームには大反対な人見広介ですが、ここへ来て、
革命家の気持ちみたいなものがほんの少しだけわかるような気がしました。
自分の愛するものが誤解されるこの違和感。
間違った(と思う)形で流布することへの嫌悪感。
それ何て危険思想?
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