第七十回 目標・本多劇場上空


諸君、私はラーメンズが好きだ
諸君、私はラーメンズが大好きだ


父さんが好きだ
バニーボーイが好きだ
いろいろマンが好きだ
近藤さんが好きだ
コロチンが好きだ
モモイロヒメカタギリが好きだ
ホコサキさんが好きだ
ネイノーさんが好きだ
マーチンとプーチンが好きだ


路上で 結婚相談所で
ホテルで 桜散る公園で
船上で 小さな会社で
インペリアル号で 小説家の邸宅で
裏山で タカシの部屋で


彼らの舞台で行われるありとあらゆる表現行動が大好きだ



ウィットをならべたネタの一斉発射が観客の爆笑と共に常識を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられた理論がノスの一言でばらばらになった時など心がおどる


小林の操る片桐が場内を席巻するのが好きだ
悲鳴を上げて駄菓子屋から飛び出してきた大島をバットでなぎ倒した時など
胸がすくような気持ちだった


姿勢をそろえた大工の一連がかわいそうなコロチンの物語を熟読するのが好きだ
恐慌状態のマチコが既に芽生えた兄との愛を何度も何度も叫んでいる様など
感動すら覚える


楽チン主義の幼馴染を「お前だろダメ人間は」と吊るし上げていく様などは
もうたまらない
泣き叫ぶ父親がクジロウちゃんの言い放った言葉とともに突如じじむさい口ぶりに
がらりと変わるのも最高だ


哀れな江ノ島が雑多な名物で健気にも立ち向かってきたのを千倍スケールの
アラスカが旅行者のプライドごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える


マリコマリオの厚かましさに部屋を滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだった締め切りが引きのばされ雑誌のページがメモ帳になる様は
とてもとても悲しいものだ


立川談志の霊に目を付けられて憑依されるのが好きだ
親戚一同に練りまわされ受験生の様に体を胴上げされるのは屈辱の極みだ


諸君 私はラーメンズを 神業の様な舞台を望んでいる
諸君 彼らに拍手を惜しまない大ファン諸君
君達は一体何を望んでいる?


更なるソロ活動を望むか?
情け容赦のない嵐の様なメディア露出を望むか?
媒体の限りを尽くし三千世界の眼を集めるアイドルの様な展開を望むか?



『本公演! 本公演! 本公演!』



よろしい ならば本公演だ



我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ
この広いネットの奥で一年近くもの間堪え続けてきた我々にソロ公演では
もはや足りない!!


ラーメンズ」を!!
一心不乱の二時間半を!!


我らはわずかに数千円、一万に満たぬチケットを買うに過ぎない
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
ならば我らは諸君と私で総計三千時間と五時間の当日券待ちとなる


我々をビデオの彼方へと追いやり仮死状態維持装置で眠りこけている父を
叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう
コンテンポラリーに冷静パスタの味を思い出させてやる
小林さんに片桐教習所の先生の声を思い出させてやる


ステージと客席のはざまには既存の哲学では思いもよらない事があることを
思い出させてやる
一千人の観客のオベイションで
本多を燃やし尽くしてやる











まだですかね、二人が並ぶのは?




(元ネタ。)







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