第四十八回 ヒロイズムということ


人から聞いた話。

朝、その人が電車に乗り込むと……







後ろでドアが音を立てて閉ま……








閉まらなくなったそうです。


30センチくらい。横になれば大人が通れる程のすき間。


おりしも通勤ラッシュ、そのまま発車もできないので、駅員さんが集まってきます。




その人も乗客も、ハラハラしながら見ています。





すると、「よし!」と一言、若い駅員さんがすき間から車内に乗り込んできて、




ドアの内側から ガッ! と、すき間を挟むように手を突きました。





他の駅員さんや、乗客たちも「?」という顔。






その駅員さん、







「こうして支えていれば、お客さんが落ちることもないでしょう。


ここは私に任せて、早く!!」














か……







カッコイイ!!!



誰もが言ってみたいセリフNo・1を、今、言いやがったなコノヤロー!!




電車はその駅員さんをそのままの態勢で残したまま、動き出したそうです。





次の駅に着いたとき、乗り口前に立っていた若い女の人が、30センチのすき間から覗く駅員さんの必死の形相に惚れたかどうかはわかりません。





人見広介はといえば、一生に一度でいいから「チッ、追っ手が来たか……」と、言ってみたいものです。




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