二人芝居「メガロポリタン・ミュージアム」

(参照:大貫妙子「メトロポリタン美術館(ミュージアム)の歌詞リンク)



【あらすじ】



美術館にやってきた一人の男の子が、いつの間にか連れとはぐれてしまう。
出口を探してさ迷ううち、彼は一つの展示物と「出会った」。
無機物でありながら、少年に語りかけてくる美術品たち。
出口のわからない男の子のように、彼らも、迷いを秘めていた。
少年との問答によって、己の中の弱さ、矛盾を突かれて慟哭する美術品、
少年の心に風穴を開ける美術品、そして彼に「出口」を示してくれる美術品。
彼ら、アート達との触れ合いによって、彼は迷宮の外への鍵を手に入れるのだった。




【登場人物】


主人公


賢いがまだまだ無邪気な男の子。8〜10歳くらい?




カンバス


何も書かれていないカンバス。女の子。
本人はモダンアートでシュルレアリスムのつもり。
本当は、まだ何も描かれていないだけなのだが、その寂しさ、己のうちに何もない事を
認めたがらない。



花の彫刻


当たらし物好きな男。若さほど素晴らしいものはない、というのが持論。
花開いた状態で、いつまでも留まっている自分が自慢でしかたがない。
自分の陶器の肌にも、いつかひび割れが来る事に、無意識的に目をそむけている。
いわば「死」への恐怖の裏返しとして、若さを偏愛している。



宝石


じいさん。自分を眺める人間達の欲深な眼差しにうんざりして、ある時光るのをやめた。
「これが叶ったら死んでもいい」が口癖。
自分の声を聞き取ることのできる人間に初めて出会えた喜びに、
自分より脆いガラスケースを自ら割って出て、少年の手の中に滑り込む。
そして、その幼い手で自分を握りつぶしてくれるように頼む。
砂になった宝石は穏やかな声で、誰しも、心ひとつで、ダイヤより硬く、砂の城よりも脆く
なれる存在なのだと言う。自分はもう硬くあることをやめた。これからは細かい砂粒となって、
風に吹かれて消える、と。
少年は、いつか自分も溶けてしまって、みんなから見えなくなってしまいたいと日がくるんだろうか、と何だか、そのことを考えてさみしくなる。



未完成の像


女の人。彫刻家が作成途中に死んでしまい「未完成の女」という作品名で展示されている。
辛うじて人間の形をしているが荒削りで、どんな姿の像になる予定だったのかは判別できない。
語尾が一文字欠ける。
未完成のまま人目に晒されていることを苦痛に感じている。








もっといっしょにいたいのに、それを告げるのって難しいタイミングがあるんだな