第百三回 母晶子

誕生日はホンッと最悪でした。


まず、家人(六人分)の夕飯を作っていたんですが、二時間煮込む角煮にはじまり、
なかなか水の抜けない炒り豆腐
果てしなく元に戻らない干し椎茸との格闘で、







倒れました。





もともと風邪気味でしたが、もーう熱は出るわ足腰は立たないわで、


せっかくのバースデーなんだから好きなものばかりを選んで作り上げたのに、



箸をつけないまま、至高にして究極ドーピングコンソメ角煮が皿に盛られる所も


見ないまま、布団に倒れこむ。味見? 何ソレおいしいの……




                 私の頭の中(モッタイナイ……モッタイナイ……)






覚醒したのは二時間後。



「角煮っ!」というザメハの呪文と共に飛び起きた私は、



居間に出て行って、晶子(母)に、



「お母さん、まだご飯残ってる?」



と尋ねる、すると、寝っころがったままテレビを見ていた晶子は





「あー、ほとんど残ってないよ」






ということは少しは残ってるはずだ!






|台所| λ.........






wktkwktk。



そして流しを見ると……













キレイに洗った鍋×3。







                ひろすけは ザオラルの じゅもんを となえた
                      かくには いきかえらなかった
                    いりどうふは いきかえらなかった
                  はるさめスープは いきかえらなかった








お母さんこれ




「ほとんど」って





言わないよー。








鍋じゃん……。







流しに置かれた鍋たちの前で呆然としている私に、後ろから晶子の声がして、






「角煮さー、





ちょっと






しょんばかったよ*1














パリーン
(↑※スカウター












       Oノ<だったら残しとけよ!
    私→ ノ\_・’ヽO.  ←母
        └ _ノ ヽ
            〉




                 ※実際に蹴ってはおりません



もうね……ほんと、人見広介は、角煮が大好きです。
大好きなんです……。
東京に帰ったら、まずはじめに角煮を食べに行こうと思います。






満漢全席 中華料理小説 (集英社文庫)

満漢全席 中華料理小説 (集英社文庫)

*1:しょんばい……しょっぱい、塩辛いの意